非日常の演出~バイク乗りのお蕎麦の食べ方11の手順~
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日常とは違う食べ方で風情を楽しむ
ツーリングとは非日常を楽しむ行為です。ですのでツーリング中はバイクに跨がっていない瞬間でもいつもと違う所作をすることが肝心です。
特にソロツーリングは「自分と向き合う行為」でもあります。自分から見てかっこいい、風情がある所作をすることが肝心です。自分を愛さずして他人を愛することができるでしょうか。況んや世界をや。
僕の普段のお蕎麦の食べ方
僕は普段の生活では蕎麦の上に薬味全てと卓上の七味を乗せて、さらに上から汁を全てかけて、一つのお団子にして一口で頂きます。
しかしツーリング中では下記のなるべくかっこつけて風情のある食べ方をします。
オコブロ推奨の風情のあるお蕎麦の食べ方
これが正しいお蕎麦の食べ方というわけではありません。全く。ただ、僕が「風情があるなぁ」と思う食べ方です。
入店
入店します。店員さんに分かりやすく人差し指を天差し指にして爽やかに「ひとりっすー」と伝えます。
着席
席を案内されたら重いジャケットを脱いで椅子の背もたれに掛けます。
「ふぅ・・・」と大袈裟にため息をつき、静かに着席します。
ここで大切なのは「ふぅ・・・」の中に
「今日朝早くてきつかったなぁ」
「ようやく昼飯だ。心地好い疲れだなぁ。」
「暑い中よく走ったなぁ」
「遠いところまでよく来たなぁ。」
という午前中の疲れや自分の頑張りに対する賛辞、あるいは「昨日までの日常の疲れやマイナスなものに対処してきた自分への賛辞」を込めます。
メニュー選びから注文
メニューを選ぶ時間は短ければ短い方が良いです。
理想は座ってすぐ、店員さんが「お冷お持ちします」と言ったときに注文を伝えることです。
初めての店では少々冒険になってしまうので二回目以降のお店で試しましょう。
「ざる」か「せいろ」か
基本的に蕎麦は冷たいものを食べます。多くの食通は真冬でも冷たい蕎麦を頂きます。余程天婦羅で有名というわけでなければ天婦羅は頼まずにシンプルに>>>ざるかせいろにしましょう。「蕎麦を楽しみに来ました」的な雰囲気を前面に出していきます。辛口の冷酒といければ最高ですがバイクなので我慢しましょう。後で日本酒要素出てきますから。
二八か十割か
二八蕎麦とは・・・
蕎麦粉8に対して小麦粉2を混ぜた蕎麦です。小麦粉をいれることで蕎麦粉10よりも滑らかな食感、喉越しを味わうことができます。よく「小麦粉を入れる分蕎麦の風味が減る」と言われますがそもそも蕎麦の風味はとても繊細な香りなので下手な職人が打った十割蕎麦より、良い職人が打った二八蕎麦の方が風味を感じられます。作り手次第です。
十割蕎麦とは
繋ぎの混ぜ物をせず蕎麦粉10で作られた蕎麦です。ざらっとした食感と蕎麦の風味をより強く感じられるお蕎麦です。結局作り手次第です。
どちらが美味しいか、どちらが大道かということは昔から議論されていますが結論は出ていません。どちらも美味しいからです。もー好みです。
山形で食べるなら十割、それ以外で食べるなら二八と決めています。山形には信じられないくらい美味しい十割蕎麦がありますが、現在、人生の成り行きで関東に住んでいますので断然二八を食べる機会が多いです。安定の二八。
まぁ結局どちらでもいいのですが、「じゅーわり」と言うより「ニハチ」と言った方がなんだか通っぽいので皆様「ニハチ」を頼みましょう。スワロフスキーと同じです。口に出して言ってみたくなりますよね。
↓この乾麺一番うまいですまじで↓
大盛はNG
せっかく来たのだから大盛にしたいところですが、ぐっと堪えて普通盛りで頼みます。
大盛にすると重量が増すため、下の方の蕎麦が潰れて楽しめなくなります。風情がないしね。
板そばや二枚頼んだり、替え玉的なことをしているお店があればそちらでたくさん食べましょう。
たくさん食べるのがダメではなく、一枚に高く盛り付けられるのが風情がないということです。
つまり注文は「ニハチのせいろで」と非常にシンプルで美しく、端的に、多分お店のメニューで最安のものになります。それが堪らなくいいのです。
蕎麦が来るまで
そわそわしてはいけません。メニューを見返して「へーそばがきもあるんだ。へー。」みたいな顔をします。言葉には出さず、少し眉を上げる程度です。
一通り飽きたらスマホをポチポチしてリラックスしてお蕎麦を待ちます。
↓カップ式のそばがきって多分世界でこれだけだと思うの↓
お蕎麦が着たら
店員さんが愛想よく「お待たせしましたー二八のせいろですねー」とお蕎麦を持ってきてくれます。
それに対して割り箸を取りながら「あざます。頂きます」と小さめの声で返します。
蕎麦の食べ方
蕎麦とお汁の香りを嗅ぐという方もいますがもってのほかです。品性下劣。
蕎麦とお汁の香りは鼻から入るものではなく鼻から抜けるものです。
蕎麦は基本的に6本ずつ、ひとすすりで食べます。
勿論厳密に6本ではなく、「6本程度の少ない量」ということです。昔から「うどん3本、蕎麦6本」という言葉があります。
それくらいで食べた方が食べやすく、見た目も美しいのです。蕎麦は文化なので先人達の教えを守りましょう。
>>>いよいよお蕎麦を頂いていきます。
最初の一口目は何もつけずお蕎麦だけ
空の蕎麦猪口を使ってお蕎麦を食べます。
ここで大袈裟に「おお!」みたいな顔をしてはいけません。お汁付けて食べた方が美味しいに決まっています。そのまま食べた方が美味しいならお汁につけない文化になっているはずです。
ここでは「うまい」「まずい」ではなく、「僅に漏れる蕎麦の繊細な香りを楽しむ」だけです。ですので表情を変えずに、当たり前の食事のようにあっさり頂きます。
二口目から~ そば清のウワバミ食い~
蕎麦猪口にほんの少しだけお汁を注ぎます。半分も注ぐのは不粋です。たくさん注ぐと最後の蕎麦湯を楽しむ時間が台無しになります。
お汁は蕎麦猪口の底から1cm程度で十分です。これにお箸でとった蕎麦の半分から1/3をちょんちょん付けて食べます。
お蕎麦が猪口の底の方で蛇が>>>「とぐろ」を巻いているようにして食べます。これを、「そば清のウワバミ(大蛇)食い」といいます。これは>>>落語の演目であるそば清に由来します。
嘘ですよ。
お汁が少なくなったら都度足します。
日本酒を注いでいるようで美しいじゃありませんか。
薬味の使い方
薬味は汁に溶かさず、一口ずつお蕎麦の上に乗せて頂きます。
何も乗せずにお蕎麦だけ
ネギだけ
ワサビだけ
ネギとワサビ両方
七味だけ
七味とワサビ
など一口一口に別々の味わいが楽しめます。
大根おろしの取り扱い
半分くらい食べ進めたら大根おろしを猪口に全てぶち込みます。大根おろしはお蕎麦とお汁を繋いでくれる役割なので他の薬味と違って蕎麦の上に乗せて食べません。別格の薬味なのです。大根おろしの影響で前半よりもお汁が蕎麦に絡みます。口のなかが少しだけしょっぱくなりますがこれは「蕎麦湯を楽しむための布石」です。口のなかが多少しょっぱくなっても飲む水の量は最小限にとどめましょう。
大根おろしをぶち込んだら先ほどの要領で食べ進みます。
蕎麦湯
何故蕎麦湯を飲むのか
そば粉の製粉技術が未成熟だった時代、蕎麦にはガンガンそば殻とか入ったまま食べていました。
そんなもんがガンガン入っているので「蕎麦を食べたら必ずお腹を壊す」という食べ物でした。
でも米は高級品だし、蕎麦も食べれないことないからまぁいっかーくらいのノリで食べられていました。
江戸のそば好きそば太郎とかって人が山梨辺りを旅をしていました。蕎麦屋に入ったら皆なんかお湯飲んでます。「あれなぁに?」とお店に聞くと「蕎麦湯だよ。こっちでは皆飲むよ。飲まないとお腹いたくなっちゃうじゃん」と言われ、食後に飲んでみたところ、これが見事に効いてお腹を壊しませんでした。蕎麦湯は胃薬、整腸薬として摂取していたのです。
それから江戸に帰って「蕎麦茹でたお湯お腹にいいよ」と広めたのが始まりです。
その後石臼とかできて製粉技術が発達していき、「お腹を壊さない蕎麦」になりましたが「なんか蕎麦湯いいよねー風情があるよねー」みたいな感じで飲み続けられているものです。
他に「お汁を最後まで飲みたかったから蕎麦湯で割って飲むようになった」という説もありますがなんだか食べ終わった皿を舐めるみたいで品がないので僕はそば好きそば太郎説を信じています。
で、>>>時は現代………
残り3口で食べ終わるという頃合いで店員さんが蕎麦湯を持ってきてくれます。ここでもまた「あざます頂きます。」と小さい声で言いましょう。口に蕎麦が入っていれば軽く頷くだけでも結構です。
最後の3口は本当に最小限のお汁で頂きます。猪口の中をなるべく空に近い状態にして蕎麦湯を迎え入れるためです。
お蕎麦を食べ終わったらほぼ空になった猪口に蕎麦湯を1/3程度注ぎます。たくさん注いではいけません。最初の蕎麦湯は僅かなお汁の香りと蕎麦湯をの奥深さを感じるために飲みます。そのために大根おろしで口のなかをしょっぱくしたのです。
それを「これこれ!待ってました!」とばかりに3口で飲み干します。この時一気に3口で飲んでください。猪口をテーブルの置いたりしてはだめです。口から数ミリ離す程度で「クックック」と飲み干します。
さて、次に猪口に残ったワサビを全て入れます。その上からまた蕎麦湯を1/3入れてゆっくり時間をかけて飲みます。ワサビが温められると辛味が飛んで、その気品溢れる爽やかな香りが際立ちます。その香りをじっくり楽しみます。
そろそろまたしょっぱさを求めてきていると思います。
次からはお好みの割合でお汁と蕎麦湯を割って飲み進めます。蕎麦湯ストレートも大変美味ですよ。
あとはお会計のときに「御馳走様でした」ときちんと言って退店です。
店の外にこんな洒落た喫煙所があり、他に人がいなければ>>>サマージャムを携帯で流して、流れる雲を眺めながらゆっくりゆっくり一服します。
美味しいお蕎麦を堪能して出発です。ここまでで非日常の演出は終わりです。お疲れさまでした。
演出が終わったら
すぐにファミマに寄ってファミチキとクリームパンを食べて「脂と甘いのうめーだわな。せいろ普通盛りじゃ足んねーだわな。」と言ってまた走り出しましょう。
勘違いしてほしくないこと
蕎麦なんて江戸時代のファーストフードですからね。江戸のマックですよ。サッと食べられてそこそこうまい。でも毎日はいらないです。ってゆー。だから師走の忙しいときにサッと食べる年越しそばがあるわけで。
有り難がって、せいろに1000円近く出して「これは香りが!」とか「蕎麦が甘い!」とか「最初はなにもつけずに!」とやってるやつらは本当めでてーですよ。マックでもそーやって食ってんのかと。
ただ我々は現代に生きているので、その辺りの歴史を理解した上で「香りが!」と言って上記の食べ方を楽しみましょう。ガチで「最初はなにもつけずに」とか言ったらポンポコポンですよ。
「基本の味付けが同じ」「全国に普及している」「安くて食べやすい」「使われている調味料が少ないから素材が~と言いやすい」という要素があるので違いのわかる男たちがこぞって甘いだの香りがだのなんだのやってるんでしょうね。ラーメンだと色んな味があるからあーだこーだ言い辛いすもんね。
くれぐれもこの食べ方はソロツー限定です。マスツーでこれやったら食べるの遅いしうっとーしいので絶対やめてください。味覚は人それぞれです。
僕にロッコルを履かせて!
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